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名古屋地方裁判所 平成元年(ワ)1260号 判決

原告

宮本尚武

被告

松井治己

主文

一  被告は原告に対し、金二六三万七八九六円及びこれに対する平成元年五月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを一二分し、その一一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し、三一二九万四五三四円及びこれに対する平成元年五月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  本件事故の発生

(一) 日時 昭和六〇年五月一日午後一〇時五五分ころ

(二) 場所 名古屋市千種区春岡町一丁目一九番一号先交差点(以下「本件交差点」という)

(三) 加害車両 被告運転の軽四輪貨物自動車(名古屋四〇ぬ一九八一。以下「被告車」という)

(四) 被害車両 原告運転の原動機付自転車(二見町う三五九九。以下「原告車」という)

(五) 事故の態様 南進してきた原告車が本件交差点を東方向へ左折しようとしたところへ、東進して同交差点へ進入してきた被告車が同交差点の北東角付近で衝突し、原告が転倒し傷害を負つた。

2  責任原因

被告は、本件事故当時本件交差点の手前進行道路の左側端に二台の自動車が駐車しており、かつ、植込みがあるため左方の見通しが悪く死角となつていることを認識していたのに、徐行もしくは一時停止をして安全確認をすることを怠り、自車を制限速度をはるかに越える速度で漫然運転進行させ、かつ、飲酒の上の運転であつたことにより原告車に気付くのが遅れて、被告車を原告車に衝突させ、よつて、原告に傷害を負わせたから、民法七〇九条に基づく責任を負う。

3  損害

(一) 通院治療費

原告は、頭部外傷、脳挫傷、右大腿骨幹部骨折の傷害を負い、その治療のため、名古屋掖済会病院に昭和六〇年五月一日から同年七月六日まで及び昭和六一年七月一四日から同月二一日まで入院し、さらに、同病院及び愛知学院大学歯学部附属病院に昭和六〇年七月七日から昭和六一年七月一三日まで及び同月二二日から昭和六二年一月三〇日まで通院したが、右通院期間中の治療費。

(二) 交通費 一二万四五九〇円

入院期間中原告の両親が付添のため通院に要した費用及び原告が右(一)の通院に要した費用。

(三) 入院雑費 五万一三四〇円

(四) 休学、留年を余儀なくされたことにより蒙つた授業料相当の損害 四二四万一五〇〇円

原告は、本件事故当時愛知学院大学歯学部の学生であつたが、本件事故のため昭和六〇年度は休学を、昭和六一年度は留年を余儀なくされ、その間の授業料を支払わざるを得なかつた。

(五) 後遺障害による逸失利益 二〇六七万三六八四円

(1) 原告には、本件事故による頭部外傷により〈1〉右上下肢の軽度の筋力低下及び軽度の運動機能低下〈2〉右半身の全知覚(触覚、痛覚、温度覚)の鈍麻〈3〉記銘力の軽度の低下が後遺障害として残存している。右後遺障害は、自賠法施行令二条別表後遺障害別等級第七級四号に相当する。

(2) 従つて原告の逸失利益は、事故当時である二四歳の平均給与額二一万七七〇〇円を基礎とし、労働能力喪失率を少くとも三五パーセント、就労可能年数を四三年間(新ホフマン係数二二・六一〇五)とすると二〇六七万三六八四円になる。

(六) 後遺障害による慰謝料 六〇〇万円

原告には、本件事故により前記のとおり記銘力や触覚の減退と握力・脚力等の運動障害が残り平成二年に歯科医となることができたものの、深淵な思考力・判断力そして繊細かつ厳密な指先での器具操作技術の習得が、依然として阻害されており、本件事故が原告に与えた精神的苦痛は計り知れない程大きなものである。よつて、後遺障害による慰謝料として六〇〇万円が相当である。

(七) 物的損害 八万五〇〇〇円

原告が所有していた原告車の事故当時の時価八万五〇〇〇円を請求する。

4  よつて、原告は被告に対し、本件事故による損害賠償三一二九万四五三四円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成元年五月二一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実のうち、(五)の原告車の進行方向及び衝突地点は否認し、その余の事実は認める。原告車は同交差点を北から南方向へ直進通過しようとしていたのであり、衝突地点も同交差点の中央付近であつた。

2  同2の事実のうち、本件事故当時本件交差点の手前被告進行道路の左側に自動車が駐車していたこと、右駐車車両の北側に植込みがあつたこと及び被告が飲酒していたことは認め、その余の事実は否認する。

3(一)  同3(一)の事実のうち受傷の内容及び通院治療費のうち五万二五三〇円については認め、その余は不知。

(二)  同3(二)、(三)の各事実は不知。

(三)  同3(四)の事実中、原告が愛知学院大学歯学部の学生であつたことは認め、その余の事実は不知。

(四)  同3(五)(1)の事実中右半身の全知覚鈍麻が後遺障害として残存していることは認めるが、その余の事実は否認する。原告の訴える後遺障害には心因的要素が関与していると考えられるし、そうでないとしてもその程度は労働には差しつかえないものであり、仮に労働に差し支えるとしても自賠法施行令二条別表後遺障害別等級第一四級一〇号に該当する程度である。

同3(五)(2)の事実は不知。

(五)  同3(六)の事実は不知。

(六)  同3(七)の事実は認める。

4  同4は争う。

三  抗弁

1  過失相殺

(一) 原告は、本件事故当時飲酒した上、本件交差点を直進通過しようとして、一時停止の標識を無視して交差点に進入した。

(二) また、原告は、ヘルメツト不着用のまま原告車を運転していた。本件事故による原告の主な受傷部位が頭部であることを考慮すると、この事実が損害の拡大に大きな影響を与えたと考えざるを得ない。

(三) したがつて、原告の過失割合が七割を下ることはない。

2  弁済

(一) 被告、原告の請求にかかる損害につき次のとおり五万二五三〇円を支払つている。

(1) 原告の名古屋掖済会病院における昭和六〇年七月九日から同年九月一三日までの通院治療費五一〇〇円

(2) 愛知学院大学歯学部附属病院における昭和六〇年七月九日から同年八月二六日までの治療費四万七四三〇円

(二) また原告の請求にかかる分以外には、次のとおり二五四万八八〇五円を支払つた。

(1) 原告の名古屋掖済会病院における昭和六〇年五月一日から同年九月一三日までの治療費二二六万八三五〇円

(2) 双葉臨床看護婦組合による付添看護料二八万〇四五五円

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1の事実のうち、(一)については原告が飲酒していたことを認めるがその余は否認する。同1(二)のヘルメツト不着用の事実は認める。

2  同2(一)(二)の各事実は認める。

第三証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

一  請求原因について

1  本件事故の発生及び責任原因

(一)  請求原因1の事実については、同(五)の原告車の進行方法及び衝突地点を除き当時者間に争いがない。

(二)  請求原因2のうち、本件事故当時、本件交差点の手前左側に自動車が駐車していたこと、右駐車車両の北側に植込みがあつたこと及び被告が飲酒していたことは、当時者間に争いがない。

(三)  右争いのない事実、いずれも原本の存在及び成立に争いのない乙第一、第三、第四、第八、第一二号証、いずれも成立に争いのない甲六号証の二、三、乙第一四号証の一ないし一一並びに被告本人尋問の結果によれば、別紙図面記載のとおり原告車が本件交差点を北から南方向へ直進通過しようとしていたところへ、同交差点を西から東方向へ直進通過しようとした被告車が同交差点の中央別紙図面の〈×〉点付近で衝突したこと、この際、被告は、本件交差点の手前左側端に二台の自動車が駐車しており、かつ、右駐車車両の北側に植込みがあるため、左方向の見通しが悪いにもかかわらず徐行せず、時速四〇キロメートルで被告車を進行させ、これを原告車に衝突させたものであることが認められる。

(四)  これに対し、乙第五、第九、第一三号証の中には、本件事故当時、原告は、本件交差点を左折しようとしていたもので、衝突地点も本件交差点の北東隅付近であるとの記載もあるが、〈1〉前掲乙第四号証及び被告本人尋問の結果によれば、本件交差点の中央付近に原告車のタイヤによると考えられる擦過痕の存在が認められ、その位置からして、衝突地点がそのすぐ西側である別紙図面の〈×〉の地点であることは明らかであり、〈2〉原告車が本件交差点を左折しようとしてその中央付近で衝突するためには、交差点の直前で右側に大きくはみだしてから左折する必要があるが、それはいかにも不合理であること等からいずれも採用することができず、他に前示認定を覆すに足りる証拠はない。

(五)  右(三)の事実によれば、被告は本件交差点に進入するに際して必要な徐行・安全確認義務の履行を怠り本件事故を惹起したものであるから、民法七〇九条により原告の損害を賠償すべき責任があるものといわなければならない。

2  損害

(一)  通院治療費 五万二五三〇円

原告の受傷の内容及び通院治療費として五万二五三〇円を支出したことは当時者間に争いがないが、その余の通院治療費についてはこれを認めるに足りる証拠がない。

(二)  交通費 一万一二二〇円

いずれも成立に争いのない甲第一号証の一、二、乙一七号証の二ないし六によれば、原告は、本件事故により名古屋掖済会病院に昭和六〇年七月七日から六一年一二月二六日まで(実日数二九日間)、愛知学院大学歯学部附属病院に昭和六〇年七月九日から八月二六日まで(実日数四日間)各通院し、昭和六一年一二月二六日症状固定したことが認められ、右によれば通院実日数三三日に対し、公共交通機関の利用料金として一日あたり三四〇円の費用を要したものと認めるのが相当である。

33×340=11,220

そして、その他に、原告の入院中に両親の付添を必要としたことを認めるに足りる証拠がないから、その交通費を本件事故と相当因果関係のある損害と認めることはできない。

(三)  入院雑費 五万一三四〇円

前掲甲第一号証の一、二によれば、原告は、本件事故により名古屋掖済会病院に昭和六〇年五月一日から七月六日まで及び昭和六一年七月一四日から同月二一日までの合計七五日間入院していたことが認められ、その間に入院雑費として、少なくとも原告主張の五万一三四〇円(一日あたり約六八五円)を要したものと認めるのが相当である。

(四)  休学、留年による損害 二八二万円

原告が本件事故当時愛知学院大学歯学部の学生であつたことは当時者間に争いがなく、弁論の全趣旨によれば原告は、昭和六〇年度同大学を休学したものと認められるが、前示のとおり、原告は、本件事故後昭和六一年一二月二六日まで入通院を余儀なくされたもので、後示の後遺障害の内容からして通院期間中も、右手の知覚鈍麻などによる筆記能力の低下等に悩まされていたものと考えられる。そして鑑定書に要約された名古屋掖済会病院の外来診療録の内容によれば、昭和六一年一月二四日同病院から「就学可能」の診断書が出ていることが認められるから以上によれば、原告は、本件事故の日である昭和六〇年五月一日から右昭和六一年一月二四日ころまでは、就学が困難であつたものと認めることができる。

そうすると、右就学困難な時期の長さからして、原告の昭和六〇年度の休学はやむをえないものというべく、原告が支出した昭和六一年度分の授業料は、本件事故と相当因果関係のある損害であると認めるのが妥当である。そして、成立に争いのない甲第五号証の一、二及び弁論の全趣旨によれば、右授業料の金額は合計二八二万円である。

原告は、このほか本件事故のため昭和六一年度も留年を余儀なくされたと主張するが、直ちにこれを認めるに足りるだけの証拠はない。

(五)  後遺障害による逸失利益 一〇六九万五二一〇円

(1) 前掲甲第一号証の一、二、証人山内惟光の証言及び鑑定の結果によれは、原告は、本件事故により中枢神経系(脳幹部)に障害を受け、昭和六一年一二月二六日症状固定したが、右半身の全知覚(触覚、痛覚、温度覚)鈍麻及び右上下肢の軽度の筋力低下・運動機能低下の後遺障害が残り、このため歯科治療器具の操作、特に歯の切削動作に支障があるほか、すばやい筆記が困難であると認められる。

しかしながら一方、原告本人尋問の結果によれば、原告は、愛知学院大学歯学部における卒業認定では実技科目に合格しており、平成二年六月から歯科医院に勤務同年九月からは一人で患者の診療に当たり、最大で半日に一〇人程度の患者を治療し、うち二、三人の歯を切削することもあるという状態にあることが認められ、しかも右勤務期間中前示知覚鈍麻等による治療上の失敗を犯しているとはみられないのであるから)原告は、間違つて削つてはならない歯を削つたことがある旨供述するが、これは知覚鈍麻等とは無関係な失敗である)、前示のとおり中枢神経系に障害があるとはいえ、原告の歯科医としての労働能力が大きく損なわれているということはできず、結局その労働能力喪失の程度は、自賠法施行令二条別表後遺障害別等級第一三級に相当する九パーセント程度と考えるのが相当である。

(2) このほか鑑定の結果には、本件事故による後遺障害として軽度の記銘力の低下がみられる旨の部分があり(甲第三号証も同趣旨)、証人山内惟光及び原告本人もこれに副う供述をするが、一方〈1〉記銘力の鑑定の結果はもつぱら原告の回答の仕方によつて左右されるものであり、〈2〉原告本人尋問の結果によれば、原告は、愛知学院大学歯学部の卒業認定を受け、歯科医師国家試験にも合格していることが認められるほか、〈3〉原告本人尋問の結果に照らしても、右記銘力の低下のため歯科治療上具体的な失敗を犯したことを窺うことができないから、このような事実に照らすと、前掲各証拠を直ちに採用することはできず、原告に賠償を必要とする程度の記銘力の低下があると認めることができない。

また、原告は、本件事故のため視力・聴力が低下した旨供述するが、これを裏付けるに足りる客観的な検査結果等がなく採用することができない。

(3) これに対し被告は、原告の後遺障害には心因的要素が作用している旨主張するが、鑑定の結果に照らし採用することができず、他に前示(1)の認定を覆すに足りる証拠はない。

(4) 右事実に基づいて原告の後遺障害による逸失利益を計算するに、前掲乙第一号証及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件事故当時二四歳で、歯科医師として就業を開始した平成二年六月には二九歳であつたことが認められるが、平成元年賃金センサス第三巻第三表企業規模計の二五歳ないし二九歳の男子医師の平均年間給与額は六五一万二九〇〇円であるからこれを基礎として、稼働可能期間を二九歳から六七歳までとすると、前示のとおり労働能力喪失の割合は九パーセントであるから、その逸失利益は、これを本件事故時の現価に引き直すと一〇六九万五二一〇円となる。

6,512,900×0.09×(22.6105-4.3643)=10,695,210

(六)  後遺障害による慰謝料

前示後遺障害の内容・程度等を考慮すると原告の精神的苦痛に対する慰謝料は一二〇万が相当である。

(七)  物的損害 八万五〇〇〇円

原告車の毀損による損害額が八万五〇〇〇円であることは、当時者間に争いがない。

(八)  以上(一)ないし(五)を合計すると、一四九一万五三〇〇円となる。

二  抗弁について

1  過失相殺

(一)  原告が本件事故当時飲酒していたこと及びヘルメット不着用であつたことは当時者間に争いがない。

(二)  原告が本件交差点に進入するに際して一時停止して安全確認したがどうかについて検討する。

(1) 前掲乙第四号証及び第一四号証の一ないし一一によれば、本件交差点には原告車の進入方向のみに一時停止の標識があり、被告車の進入方向にはその標識がないが、衝突前に被告がはじめて原告車を発見したとき、被告車は別紙図面の〈2〉の地点、原告車は同図面の〈ア〉の地点におり、その後同図面の〈×〉の地点で衝突するまでに、被告車は同図面の〈3〉点までの約二メートル進行していることが認められる。一方同号証によれば、右〈ア〉点と〈×〉点との距離は約二・六メートルで原告車の先端から原告の乗車位置までの長さは〇・八から一メートル程度と考えられるからこれを引くと、被告車が右二メートル進行する間に、原告車は約一・六から一・八メートル進行したと推認することができる。

一方前掲乙第八、第一二号証によれば、右〈2〉点での被告車の速度は、時速約四〇キロメートルで、急ブレーキを踏んでも殆んど減速する間もなく被告車と衝突したと考えられる。とすれば、右区間での原告車の速度は時速三二から三六キロメートルと推認でき、誤差をみこんでも少なくとも時速約三〇キロメートル以上で本件交差点を通過しようとしていたことがわかる。もし原告が交差点直前で一時停止していたのであれば、いくら加速のよい原告車であつても発進してから衝突するまでに前記スピードに達することは通常困難である。

(2) 次に、右乙第四号証添付の写真(一三、一四枚目)をみると、被告車の左前側部の運転席側ドアが大きくへこんでいるが、かかる凹損はドアに垂直にかなり大きな圧力が加えられたことを意味しており、原告車が被告車にかなりのスピードで衝突したことを裏付けるものでありこの点からも原告が交差点直前で一時停止しなかつたことを確認することができる。

(3) そうすると結局原告は、本件交差点に進入するに際し、標識による規制に反して一時停止をせず、必要な安全確認も怠つたものということができ、乙第九、第一三号証中の右認定に反する部分は、前掲各証拠に照らし直ちに措信することができず、他にこの認定を覆すに足りる証拠はない。

(三)  以上によれば、原告は、飲酒のうえ一時停止を怠つて本件交差点に進入し、被告車と衝突しており、しかもヘルメット不着用であつたことから、頭部の傷害を拡大させたものというべきであり(前認定のとおり衝突時の被告車の速度は時速約四〇キロメートルであつたと考えられるから、原告のヘルメット着用の有無は結果の拡大に有意な差異をもたらすと考えられる)、一方被告も一時停止が義務付けられていないとはいえ、格別徐行することなく本件交差点に進入し、かつ事故当時飲酒していたものであるから、これらの事情を総合すると原告の過失割合は、七割が相当と考えられる。

2  弁済

(一)  被告が原告に対し通院治療費のうち五万二五三〇円を支払つたことは、当時者間に争いがない。

(二)  また、そのほか被告が原告に対し、原告の本訴での請求以外の損害について二五四万八八〇五円を支払つたことも当時者間に争いがない。

(三)  したがつて、前示一2(八)の損害合計額一四九一万五三〇〇円に右二五四万八八〇五円を加えると、本件事故により原告が蒙つた損害の総計は一七四六万四一〇五円となる。

そして前示1認定の過失割合にしたがつて、その七割を減額すると五二三万九二三一円となるから、これから右のとおり被告が弁済したことに争いがない合計二六〇万一三三五円を控除すると残額は二六三万七八九六円となる。

(14,915,300+2,548,805)=17,464,105

17,464,105×(1-0.7)-(52,530+2,548,805)=2,637,896

三  結論

以上の次第で、原告の本訴請求は、被告に対し、二六三万七八九六円及びこれに対する訴状発達の日の翌日である平成元年五月二一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項をそれそれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 夏目明徳)

別紙〔略〕

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